内臓脂肪 vs 皮下脂肪。違い・見分け方・落とし方の優先順位

内臓脂肪 vs 皮下脂肪。違い・見分け方・落とし方の優先順位

内臓脂肪 vs 皮下脂肪

「お腹のぽっこり、内臓脂肪?それとも皮下脂肪?」
「両方ある人はどっちから落とせばいい?」
「アプローチって違うの?」

体脂肪と一口に言っても、内臓脂肪と皮下脂肪は別物。 健康リスクも、落とし方も、まったく違います。

このコラムでは、2 つの脂肪の 違い・見分け方・優先順位 を Middles の中道の視点で整理します。

この記事の内容は、動画(約 10 分)でも解説しています。


1. 2 つの脂肪のちがい(基本のき)

体の脂肪は、つく場所で大きく 2 つに分かれます。どちらか片方だけという人は少なく、多くの人は両方を持っています。大事なのは「どちらが多めか」を知っておくことです。

内臓脂肪

  • 場所:お腹の奥、腸のまわりなど内臓を包むように
  • 体型の傾向:おへそまわりが前に出る「りんご型」
  • 健康への影響:増えすぎると大きい
  • 変わり方:生活を整えると先に反応しやすい
  • つきやすい人:男性/閉経前後からの女性

皮下脂肪

  • 場所:皮膚のすぐ下、全身
  • 体型の傾向:下腹・お尻・太ももがふっくらする「洋なし型」
  • 健康への影響:内臓脂肪より小さい(下半身の脂肪は体を守る働きも)
  • 変わり方:ゆっくり
  • つきやすい人:女性

2. なぜ「内臓脂肪」が注目されるのか

脂肪は、エネルギーをためるだけの場所ではありません。いろいろな物質(アディポサイトカイン)を出して、体の働きに関わっています。内臓脂肪が増えすぎると、血糖・血圧・血液の脂質のバランスを乱す方向の物質が出やすくなります。

100cm²
おへその高さの内臓脂肪の面積(CT)。これ以上でリスクが重なりやすい
85 / 90cm
それに相当する腹囲(男性 / 女性)
3
高血糖・高血圧・脂質の異常が重なりやすくなる

日本の基準づくりでは、内臓脂肪の面積が 100cm² 以上の人で、合併する病気の数が多いことが示されました。これがメタボリックシンドロームの考え方の土台です。(出典:メタボリックシンドローム診断基準検討委員会 2005/健康長寿ネット「腹囲の基準は、なぜ 85cm?」)

ただし、怖がる必要はありません。内臓脂肪には「先に反応しやすい」という、うれしい性質もあります(5 章)。


3. 自分のタイプを知る 4 つの目安

内臓脂肪を正確にはかるには CT などの検査が必要です。ここで紹介するのは、家でできる目安。1 つで決めつけず、いくつかを合わせて「だいたいの傾向」をつかむくらいがちょうどいいです。

目安 見方 出典
① 腹囲 立って軽く息をはいたときの、おへその高さのお腹まわり。男性 85cm・女性 90cm 以上は内臓脂肪が多めかもしれない目安(女性は皮下脂肪が多いぶん基準が大きい) 日本の健診(特定健診)の基準
② ウエスト ÷ ヒップ 男性 0.90・女性 0.85 以上で健康リスクが高まる。男女で基準が違う点に注意(例:女性でウエスト 80cm・ヒップ 90cm=0.89 は基準を超えている) WHO 2008
③ 体組成計の内臓脂肪レベル 区切り方は機種ごとに違う。例:オムロンは 1〜9 標準・10〜14 やや高い・15 以上 高い。お使いの機種の説明書の目安で見る メーカー取扱説明書
④ 体型の傾向 おへそまわりが前に出る(りんご型)か、下腹・お尻・太ももがふっくらする(洋なし型)か —
いちばん確かな手がかり:健診の結果(腹囲・血糖・血圧・脂質)がある方は、そちらを優先して見てください。

4. 下半身の皮下脂肪は「悪者」ではない

お尻や太ももの皮下脂肪は、見た目で気にされやすい場所ですが、健康の面では悪者とはかぎりません。研究では、下半身の皮下脂肪には余ったエネルギーを安全な場所にしまっておく働きがあり、体を守る側に働いている可能性が指摘されています。(Manolopoulos ほか 2010)

「なかなか減らない」と感じやすい場所ですが、それは体がサボっているわけではありません。


5. 先に動くのは内臓脂肪

うれしい性質:体重が少し減る段階でも、内臓脂肪は割合として大きく減りやすいことが研究のまとめで示されています。さらに、食事制限をしなくても、有酸素運動を続けることで内臓脂肪が減ったという報告もあります。(Chaston & Dixon 2008/Vissers ほか 2013)

つまり、体重の数字があまり動かない時期でも、お腹の奥ではちゃんと変化が起きているかもしれません。数字が止まって見える時期こそ、やめないことに意味があります。なお、どの部位が何か月で落ちる、という決まった順番や期間はありません。変わり方には個人差があります。


6. 内臓脂肪の整え方(3 本の柱)

1

動く
大人は、歩く程度の体の動きを 1 日 60 分(約 8,000 歩)、息が少し弾む運動を週 60 分以上が目安。まずは「今より 10 分多く歩く」からで十分。長い座りっぱなしも減らす
2

食べ方を「選ぶ」
白いごはんに大麦・もち麦をまぜて食物繊維を足す/甘い飲み物とお酒は「やめる」より量を決める/夜遅い時間のどか食いはなるべく避ける
3

休む
睡眠不足が続くと、食欲のリズムも乱れやすくなる

大麦の研究では、内臓脂肪が多めの人のグループで減り方が大きかったという報告があります(Aoe ほか 2017・日本人 100 人・12 週間)。小さな研究なので、これだけに頼らず「毎日の主食の一工夫」と考えてください。(運動の目安:厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」)

おすすめしないこと:極端な糖質ゼロや食事を抜くやり方は、続かず、筋肉も落ちやすくなります。

7. 皮下脂肪は長い目で

皮下脂肪は、内臓脂肪よりゆっくり変わります。大事なのは、筋肉を守りながら、全身の脂肪を少しずつ減らしていくことです。

1

筋トレを週 2〜3 日
スクワットや壁を使った腕立て伏せなど、全身を使う運動で OK(身体活動・運動ガイド 2023)
2

毎食たんぱく質を 1 品
肉・魚・卵・大豆製品。体を作る材料を切らさない
3

変化は「月単位」で見る
週ごとの上下に振り回されない

マッサージや体を温めることで脂肪が溶けて減る、という確かな根拠はありません。ただ、気持ちよくて続ける助けになるなら、それはそれで良い習慣です。


8. 部分やせの落とし穴

NG なアプローチ

  • 下腹だけの腹筋で下腹の脂肪を減らそうとする(6 週間の腹筋運動でもお腹の皮下脂肪は変わらなかった研究あり)
  • サウナや汗で減った体重を「脂肪が減った」と思う(ほとんどが水分)
  • 1 か月で下腹を何とかしようとする
  • 極端な糖質ゼロ・食事を抜く

OK なアプローチ

  • 全身の運動+食事の選び方(脂肪は全身から少しずつ使われる)
  • 腹筋は姿勢や体幹のために
  • サウナはリラックスとして楽しむ
  • 月単位で見る

(腹筋運動の研究:Vispute ほか 2011)


9. 性別・年齢による傾向

傾向 中身
女性 女性ホルモンの働きもあり、お尻・太ももなど下半身の皮下脂肪がつきやすい
閉経の前後 女性ホルモンが減ることで、内臓脂肪がつきやすい体に変わっていく
男性 もともと内臓脂肪がつきやすい

若いころは洋なし型だった人が、あるときからお腹まわりが気になり始めるのは、体の自然な変化です。何年代だからこう、と年齢で区切れるものではないので、「自分がどの時期にいるか」の目安にしてください。(Lovejoy ほか 2008/Karastergiou ほか 2012)


10. 数字との付き合い方

  • 腹囲は月に 1 回、同じ時間に測る
  • 体組成計の数字は 1 日ごとではなく1 週間の平均で見る
  • 数字だけでなく、体調・動きやすさ・服の着心地の変化もメモする
医師に相談してほしい方:健診で血糖や血圧などを指摘された方、持病がある方、治療中の方、妊娠中・授乳中の方は、自己判断で食事を減らさず、医師に相談してください。

11. まとめ:お腹の脂肪、まずはタイプを知る

  • 内臓脂肪=健康のために最初に向き合いたい脂肪。生活を整えると先に反応しやすい
  • 皮下脂肪=ゆっくり変わる脂肪。筋肉を守りながら月単位で
  • 目安は腹囲(男性 85cm・女性 90cm)とウエスト÷ヒップ(男性 0.90・女性 0.85)。健診の結果があればそちらを優先
  • お腹だけではなく全身で。減らすより、選ぶ

「お腹を凹ます」ではなく「お腹の脂肪のタイプを知って整える」──これが Middles の中道の整え方。焦らず、自分のペースで進めましょう。

出典

  1. メタボリックシンドローム診断基準検討委員会「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」日本内科学会雑誌 2005;94(4):794-809
  2. 健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「腹囲の基準は、なぜ 85cm?」/日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン 2022」
  3. WHO. Waist circumference and waist–hip ratio: report of a WHO expert consultation. 2008
  4. オムロン 体重体組成計 取扱説明書(内臓脂肪レベルの判定区分)
  5. Chaston TB, Dixon JB. Int J Obes. 2008;32(4):619-28
  6. Vissers D ほか. PLoS One. 2013;8(2):e56415
  7. 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド 2023」
  8. Aoe S ほか. Nutrition. 2017;42:1-6
  9. Manolopoulos KN, Karpe F, Frayn KN. Int J Obes. 2010;34(6):949-59/Karastergiou K ほか. Biol Sex Differ. 2012;3:13
  10. Vispute SS ほか. J Strength Cond Res. 2011;25(9):2559-64
  11. Lovejoy JC ほか. Int J Obes. 2008;32(6):949-58

※この記事は一般的な情報で、診断や治療を目的としたものではありません。


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